日本ではここ数年、フィリピンからの介護職(技能実習生または特定技能として)の雇用が増えている。
介護職だけでなく農業や工場勤務等も含めて、少子高齢化で労働人口が減っているのと同時に、主に日本の若者が就きたくない仕事について、外国人労働者を必要としている。
で、自分も、日本で働くためにフィリピンで日本語と介護を学ぶ学生や、また、卒業生を多く知っている。
ただ、現在のコロナ渦により、フィリピンから働きに来るのも困難になっている。
試験に受かり、書類審査や面接(Webでの)も終え、あとは日本に行くのを待っている状態の、フィリピン人が多くいるのだが、
ここ数か月で彼ら、彼女らからの話(チャット等で)でよく聞くのが、
「日本の施設で働くのが決まっていたのにキャンセルになった」
というものだ。
まあ、この状況では仕方ないだろう。
日本では、昨年の(一度目の)緊急事態宣言後、入国規制が緩和され、海外からの労働者の入国ができるようになってはいるが(今度の緊急事態宣言でまた厳しくなるのだろうか?とりあえずそういう話は聞かないが、、)、コロナ対応で大変な状況の介護施設で、海外(それも感染状況が決してよくはなく、変異ウィルスもあるフィリピン)から新たに介護実習生を受け入れるのは、やはり困難なことだろう。
自分が関わっている学校は、日本で介護職に就くために、無料で日本語と介護を教える、という学校なので、貧困層の学生も多い。そして、何事もなければ、この春から日本で働けたのに、コロナによってキャンセルされた。彼女らの中には、生活のため何もせずにただ待っているわけにはいかず、フィリピンで仕事を探すことになり(今はそれもまた、より難しいのだが)、ずっと抱き、そして努力してきた、日本で働くという夢を、半ばあきらめた者もいる。
コロナは本当に多くの大切なものを奪っていく。
ところで。
政府が昨夏から実施した入国制限の緩和では、日本国籍のある帰国者だけでなく、ビジネス往来の外国人もOKになったのだが、
「ビジネス」といっても、外国から多国籍企業の商社マンが日本でのビジネスのためにいっぱいやってくる、とかではなく、実際は、来日した外国人のうち技能実習生と留学生が7割超に上る。
入国緩和は企業の出張などを連想させる「ビジネス往来」の再開としてイメージされるが、実態は事実上の低賃金労働者といわれる実習生らが入国者の大半を占めているわけだ。
ちなみに写真は、防護服を着て日本への飛行機に搭乗するベトナムの技能実習生。
入国の中心となった技能実習生と留学生(多くの留学生はアルバイトをしている)は現在、日本で約70万人が働く。彼らが低賃金で長時間働くことで成り立っている企業は多く、たとえこのコロナ渦でも、ビジネス往来はOKとしたのは、政府が経済界の求めに応じて、低賃金で雇える外国人労働者が入国できる環境を整えたとみられる。
ようするに、コロナ渦にもかかわらず入国規制緩和を急いだ真の目的は、日本で足りていない外国人労働者の受け入れだというわけ。
コロナ前だった2019年の入国と比べると、違いは鮮明であり、よりその事実がはっきりする。緩和の対象にならない観光を除いた割合をみると、19年は短期滞在(企業の出張等のいわゆる本来の意味での「ビジネス」)が42%で、技能実習が4%、留学が8.8%だった。
そして、コロナによる移動の自粛や、リモートの活用で出張は大幅に減っているのだが、技能実習生らの入国は平時とほぼ変わらず続いており、結果、技能実習生の入国の全体に占める割合は、多い週で43.2%にもなった。
ということ。
また、ここでよく考えてみてほしい。
本来、実習生は技術を学び母国で役立てるのが目的で、就労を目的とした在留資格ではない。厳密に言えば「出稼ぎ労働者」ではなく、海外から技能を学びにきたのだ。しかし実際には、今回のコロナ渦ではっきりしたのは、日本政府や企業は彼ら、彼女らを、「ビジネス関係者」と捉えてるということだ。
学びに来たのではなく、働きに来たのだと。
と、考えると、「おや?」と思うのだが、働きに来る方の外国人も、技能実習生といいながらも、やはりお金のための「出稼ぎ」だと捉えており、技能の取得のための学習ではなく、仕事・お金のために日本に来ている。
だからまあ、技能実習生を巡る制度と出稼ぎでしかない実情に対する矛盾があるのだが、現実的には、問題はない(?)というか、実質上の出稼ぎ労働者状態で、ふつうに回ってるのだが、、、
そしてまた、この制度の目的として、というか建て前としては、日本で数年働いて、技能を身に着けて、帰国したら本国でそれを活かして産業を活発化させる、、、ということなのだろうが、実際は、帰国したら特に仕事が待ってるわけではなく、また大変な生活に戻ることになる。実習とか言ってるのに、じゃあ日本側からその後のフォローがあるかといたったら、何もない(場合がほとんど)。
そしたらいったい何の意味があったのかといったら、日本で働いた間の仕送りで、フィリピンの家族が小さなお店(サリサリ)を始めたり、貯めたお金で家を建てたり、それが、実際の「技能実習生として日本に滞在した数年間」の証や成果となる。
まあようするに、、やっぱり、
「出稼ぎ」だ。
そんな現状について、やはり腑に落ちないというか、問題はたくさんあると思うのだが、それとはまた別に、結局はただの出稼ぎ労働者と同じなのに、技能実習生という、一見聞こえのいい制度によって、このコロナ渦で、改めて浮き彫りになった大きな問題がある。
コロナ渦による解雇で生活困難に陥っている技能実習生(いや、外国人労働者、といってしまっていいだろう)の、理不尽な状況について。
次回(近々😅)、そのことを書こうと思う。