フィリピン・セブ島のにあるNGOの現地事務所は、NGOの運営するスラムの子どもの施設の中にある。
そこでは、数人のボランティアスタッフが、地域の支援や、施設で子どもの世話をしてくれている。
現地事務所はスラムの真ん中にあることもあり、ボランティアスタッフもスラムに住んでいる。
そんなひとりのスタッフの長男に子どもが産まれた。
スタッフの彼女にとって初孫なわけだ。
初孫であるし、もちろん彼女も喜んでるし、めでたいことだと思う。
が、、、
彼女の家族は決して裕福ではない。
いや、けっこう深刻な貧困層だ。
NGOでボランティアスタッフとして活動を手伝ってくれていることもあり、ある程度の生活の支援はしているが、やはり、その生活はとても厳しい。
旦那はトライシクル(バイクタクシー)の運転手だが、アルコール依存症で、あまりちゃんと働けていない。
貧困層によくありがちで、子どももたくさんいる。
NGOのスタッフとして働き始めて、少し生活が落ち着いたが、それまで、その子どもたちはみんな、貧困のため学校に行けなかった。
末っ子のひとりの娘は、まだ年齢がそれほどでもなかったため、生活支援と同時に、NGOのサポートチャイルドとなり、スカラシップで、3年遅れだが、今、小学校に通っている。
兄弟はみんなトライシカット(チャンリコタクシー)の運転手をしてる。
貧困層のいちばんといっていいほどのメジャーな職業だ。
ということは、そんなに稼げないということだ。
この長男も毎日トライシカットを漕いでいる。
学校は行けなかった。
奥さんも学校には行っていない。仕事もない。
ただでさえ貧困で生活が大変なのに、また家族が増える。
赤ちゃんを授かることは幸せなことだろう。
しかしこれからのことを考えると、同時に心配は尽きない。
特に、今、フィリピンでは新型コロナウィルスにより世界最長のロックダウンが続いている。
経済活動は止まり、もちろんトライシカットのような末端の仕事への打撃も相当悲惨なものだろう。
今月産まれたということは、逆算すると、よく言われる、ステイホーム故の「コロナベイビー」というわけではないが、だからといって、パンデミックの中産まれた赤ちゃんは、タイミング的にも大変としか言いようがない。
コロナがどうこうということは置いておいても、貧困層の多産については大きな問題となっている。
家族計画や避妊の知識もない。
例えば今回のコロナでも、貧困層を中心に、「予期せぬ」妊娠が爆発的に生じ、来年の出生数が大幅に増加すると見られている。
たとえ予期せぬ妊娠でも、カトリック故、中絶などあり得ない。
極端に言えば、レイプでもだ。
少し前までは避妊さえ禁じられていた。
愛ゆえに子どもが産まれる。
そして生活はより厳しくなる。
子どもが成長すれば家族を助けてくれる?
しかし貧困により、学校に通えなかったりで、ちゃんとした仕事に就くことができないことにも繋がる。
そしてまた貧困の連鎖と悪循環が家族に襲いかかる。
それが現実である。
いや、
赤ちゃんは確かに、きっと家族に幸せを運んでくれる。
それは確かだろう。
たとえ貧困の中でも、家族に笑顔と明るい時間を届けてくれる。
だから、
やはり、せめて祈ろう。
そして祝福しよう。
この幸せな出来事を。
信じよう。
新型コロナウィルスによるロックダウンで、ただでさえ家族は生活の糧を失い、飢えに苦しんでいる今、
そんな厳しい現実のなか、
今、きっと何か大きな意味があって、この家族のもとに産まれてきたこの子が、
家族のどうしようもなく困難な毎日の、
暗闇を照らす希望の光となるように、、、